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雄山

男はただ我武者羅に、尻を左右に振り続ける。

にぃ 男は尻を振りながら軽い笑みを浮かべる。

「ケツだけ星人、だぜぇ」

ぶり。
ぶり。

男が掠れた声で呟く。

一体―――
一体、この行為に何に意味が有る?
幼子は自らに問う、が、答えは出ない。

ケツ―――
ケツだけ星人、だと。
馬鹿げている、この男は白痴か?

だが。

目が離せない―――

幼子の意識を掴んで離さぬ、何かがその尻には有った。

「ケツだけ、ケツだけぇ」

ぶり。
ぶり。

男は呪文の様な言葉を吐きながら、恍惚とした表情で尻を振り続けている。

その時。

きしぃ きしぃ。

男の後ろにある硝子戸が、何かを擦り合わせる様な鈍い音を立てて開く。
男は咄嗟に後ろを見る。

あひゃらららららら。

男は腹から怪鳥の様な砲叩を絞り出す。
入ってきたのはエプロンを着た女だった。

にぃ 女の顔が皮肉っぽい笑みで醜く歪む。

「―――よう、しんちゃん」

男の額にじっとりと脂汗が浮かぶ。

あ、か、ひ。

男は意味に成らない呻き声を上げる。

「こりゃあ、ぐりぐり、だなぁ」

ひっ。
ひっ。
ひっ。

男は下着も履かずに異父の表情で逃げ出そうとする。
だが、後少しの所で女に捕まった。

「逃がさねぇ、ぜぇ」

そして―――

おきゃぁぁぁぁぁあああ
今日も平和な野原家であった。



 
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