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まや


「さぁやってみるんだなぁ、逃げた小鳥のパントマイムをよぉ」

にぃ、そばかす面の娘は、両頬を吊り上げる皮肉っぽい笑みを浮かべる。

何。
私が。
それを、やれと―――

「良いさ、やってやろうじゃねぇか」

にぃ マヤは心底楽しそうに笑みを浮かべる。

「さあ、見せてくれよ、模範演技とやらをさぁ」

そばかす面の声など最早マヤには届いていなかった。

く。
く。
く。

―――楽しいじゃねえか。

マヤの身体から感情が溢れる、それは歓喜だった。

「さぁ、行くぜ―――」

マヤは動かなかった。

いや、正確には動いていた。

静寂だけが、辺りを支配する。

一秒と半刹那が経った。


けく。

けく。

けく。


部屋中が皮肉っぽい笑いで包まれる。

「おいおいどうしたい、かかしじゃあるまいし」

そばかす面はひっ、ひっ、ひっ、と、頬がこれ以上持ち上がらないくらいに吊り上げる笑みを浮かべる。
その時、横に居た娘がそばかす面の肩をぽん、ぽん、と軽く叩く。

「何処に目を付けている、お前の目は節穴か?」

瞬間、そばかす面の心臓が跳ねる。

馬鹿な。
ここに居る筈―――

そばかす面はゆっくりと横を見る、そこには奴が居た。

「ひっ姫川さん、どういう事ですかい」

そばかす面は震えながら笑みを張り付ける。

「分からないのか、あの娘をよぉく見てみろ」

にぃ 姫川は笑みを浮かべる。

―――何?
そばかす面はマヤをじっと見る。


―――!


一瞬、マヤの後ろに何かが見える。

おきゃぁぁぁぁぁぁああ

そばかす面は怪鳥の様に腹から砲叩を絞り出す。

何だ。
何だ今のは。

「俺の目が、どうかしちまったのか」

そばかす面は目を乱暴に擦る。

く。
く。
く。

「どうだい、解ったかい」

そばかす面は何も答えず、ただ青ざめた顔で震えていた。

恐ろしい―――
恐ろしい、子だぜ。
まったく―――

たまらぬ北島マヤであった。



 
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