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涼口ハルオの筋肉 プロローグ

 
 薔薇族の存在を信じるかと言われれば、今の俺は迷いも無くNOと答えるだろう。
 
 そりゃあ昔は俺だってそこらの一成人男性の様に、極々一般的な衝動に突き動かされ
 毎日のようにハッテン場の公園やサウナや二丁目などの薔薇スポットへ足を運んでいた時期もあったさ。
 
 しかし、中学生の夏を二回も無駄にしてなお、薔薇続という存在にはついぞハッテンするどころか出会えた事すら無い。
 
 そもそもオルテガさんやむっちりパパや糞親父やKAZUYA、まさよしや万力のイチや、はたまた平井堅などという
 素敵な雄兄貴達は、皆フィクションやファンタジー世界の住人で有る事は間違いないのではあったが、
 それでも魔法以上のユカイを探しに行きたくなるというのは一成人男性としては仕方のない事であろう。
 
 それでもなお探し続けていた俺ではあるが、その今まで行為が全くの無駄だと分かってしまったのが
 中三の冬、蘇民祭でのTVクルーの対応である。
 
 余りにヤラセ臭いハッテン場というその歪なアイロニーに、まるでデビュー当初のダンディ坂野の様にいきり勃っていた
 俺のリビドーという名の病は、まるでデビュー半年後のダンディー坂野のようにあっという間に熱が引いてしまったのである。
 
 そんな訳で徐々にハッテンへの興味も薄れていき、中学を卒業する頃には、俺はすっかりとノンケ色に染まっていたという訳なのさ。
 
 
 
 
 そして今、俺は新しく入学する高校へと続く妙に急勾配な坂道を歩いている。
 
 と言っても新しい環境への有り余る期待と興奮に思わず<そんきょ>の体勢で高速ピストンしながら登校したり、
 自己紹介の祭に漢極まってしまいそのまま壇上で舞台キメるような、そんな雄臭ぇ事ををする訳でもない。
 
 俺はもうノンケである。
 ノンケとして生きていくと、あの苦い蘇民祭に誓ったのである。
 
 ・・・まあ、新しいクラスにいい男がいないかどうか、期待していない訳ではないのだが・・・。
 
 
 
 
 
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