戻る

【コ・ピペ】ウホの男

 
 ...それはとある男の小さな恋物語
 果たしてこれは悲劇なのか それとも喜劇なのか
 顛末を知ることの無い物語は今 幕を上げる...
  
 ...<<クソミソ>>...
  
 重なり合う吐息 駆ける足音 追い立てる恐怖の連鎖
 迫り来る尿意 静かなる刃 追い縋る解放の歓喜
 陽に当たる公園 約束された場所 手繰り寄せる記憶を糸の様に
  
 ...<<クソミソ>>...
  
 ...そこは昼下がりの公園 男は尿意を催していた
 解放を待ち望むペトロ 許しの門はもうその小さな手に迫っているというのに
 嗚呼...何故気が付いてしまったのであろうか 傍らのベンチに佇む彼の姿に...
  
 "うほ いい男"
 
 ルネサンスの彫刻の様に 鍛えられたしなやかな肢体
 ぞっとする程のいい男 彼は一目で恋をした
 薄藍色の衣に身を包み 隔世の呈をした瞳
 迫り来る闇をも忘れて 彼は男を見つめていた
 
 ...不意に動く男の右手
 はっとする彼の前で男は自らを縛るしがらみを解きほどいていく
 徐々に明かされる真実 やがてその右手が真実の深淵に到達すると...男は言った
 
 動くは男の唇 紡がれるは甘い誘惑 絡みつくは薔薇の茨
 それは禁断の果実 楽園に縋る彼の糸 繋がりを断つ蛇の一言
 
 ―――やらないか...
 
 救済を求める貧困の炎 覆うような欲望の炎 身を焦がす二つの炎
 二つの火種は混じり合い 二度と元の炎とは成り得ない
 
 ...春の訪れは唐突に 神の配剤は残酷に
 覆い被さる夕闇に背をそむけ 彼は眩しく灯る篝火に身を寄せる
 徐々に狭まる男との距離 炎に魅入られた蝶はやがてその見を灼かれて死んでしまうというのに
 嗚呼...それなのに何故彼はホイホイと着いて行ってしまったノダろうか...
 
 その微笑みは暖かく 懐疑の氷は溶け消えて 
 後に続くは涙の痕か ただ揺れぬ水面が残るだけ
 
 ...運命は時として戯曲と変わる ちょっとワルっぽい男は彼をとある場所へ連れ去ってしまう
 嗚呼...なんという皮肉であろうか 彼が着いた先はトイレだったではないか
 戸惑う彼の手を取って 彼は男の手を取って 手と手を取り合う二人の男
 数奇な運命に導かれ 今こそ楽園への扉は開かれん...

 ...<<クソミソ>>...
 
 ...<<クソミソ>>...

 
 ...それはとある男の小さな恋物語
 果たしてこれは悲劇なのか それとも喜劇なのか
 その後の男の行方は 誰も知らない
 
 
戻る